社会とのかかわりを持てず、誰にも看取られることなく部屋で最期を迎える「孤独死」が、大きな社会問題として認識されています。
特に、最近の流行病の影響で、人との直接的な関りが減り、人間関係が希薄になり、個人が社会から隔離されました。そして、未来に不安を抱え、生きる希望を見出せない人が増えた結果、孤独死者数の増加に拍車をかけています。
高齢者だけでなく、若者も孤独死の当事者に該当していることから、誰にでも起こりうるものであり、今後ますます増えていく事が予想されます。
筆者は、孤独死の現場へ赴き取材を通して、私たち一人一人が孤独死の当事者として、これからの社会の在り方を模索していく必要があることを伝えています。
本書を読んでみて
孤独死のテーマについては、以前紹介した[うらやましい孤独死 森田洋之]の書籍内容に重複しています。
この書籍で取り挙げられている高齢者は、家族や近隣住人達が当事者の死生観を受け止めて、最期までサポートしていました。
つまり、社会的な孤立状態にはなっておらず、ある程度人間関係を築けていたからこそ実現できたのだと思います。
本書では、社会的な孤立状態に陥り孤独死した当事者たちの境遇や、遺族の思いをそのまま文章化しており、人との繋がりを持つことが大切であることを改めて痛感しました。
人間関係は、煩わしいと思う時もありますが、人は一人で生きていく事はできない為、誰かに気軽に頼り、頼られる人間関係を作っていくことが、孤独死を乗り越える唯一の方法であることを改めて認識しました。
概要について
全6章から構成されています。
・1章
孤独死現場や、ニッセイ基礎研究所の取材を通して、孤独死を防ぐ手段について言及しています。
筆者は孤独死の対策として、以下のことを伝えています。
①社会的な孤立が孤独死に繋がる為、孤立した者同士が寄り添える居場所を作る
②高齢者は、社会から離れることなく、現役とは違ったその人の働き方ができる職場に所属し、人との関わりを作る
③孤立状態にある人に対して、無関心でいるのではなく、関りを持ち、社会に置き去りにしない思いやりの心を持つ
他には、1000万人以上が孤立状態にあることが推測され、孤独死予備軍であることを危惧しています。
これは、ニッセイ研究所が独自に「孤立リスク」の評価指標を開発し、年齢別(4世代に年齢層を分ける)にアンケート形式で集計した結果と、2010年の国勢調査で判明した人口数の結果を複合して算出しています。
過去のデータであるため、現在の孤独死予備軍はもっと増えていることが推測されます。
・2章
孤独死で母を失ったある遺族について深く取り挙げています。
遺品整理や、特殊清掃員の作業に立ち会い、現場の状況を生々しく伝えています。また、故人の人生を振り返りながら、残された遺族の様々な思いや、遺族との思い出について深く触れています。
他には、故人の死をきっかけに、様々な人との新たな繋がりができたことや、遺族間の絆が強固になったといった後日談を紹介しています。
・3章
セルフ・ネグレクトと孤独死について取り上げています。
民生委員や、ニッセイ基礎研究所の取材の中で、セルフ・ネグレクトを抱える人の孤独死を防ぐのが難しいことに触れています。
理由としては、他人との関係を完全に遮断し、地域から完全に孤立しているため、当事者の身に何かあっても発見されないことが多いといいます。
また、セルフ・ネグレクトを抱える人の共通点について触れており、自分の心身の健康を損なう(自分自身の世話をしなくなる)行動をするケースが多いと述べています。
更に、高齢者よりも年齢層の低い人のセルフ・ネグレクトに関しては、他者からより認識されにくい状況であることを伝えています。
これは、民生委員などの訪問者と接する機会が高齢者と比べると少ないことや、仕事をしていない場合では、心理的ストレスや精神疾患を、誰にも打ち明けず抱え込んでしまうケースが多いことが理由として挙げられるといいます。
他には、妻との死別により、セルフネグレクト状態に陥ったものの、人との繋がりを持ち社会復帰したある男性の話を紹介しています。
・4章
孤独死を防ぐ為に、近隣住人との「支えあいマップ」作りについて取り挙げられています。
これは、「福祉のまちづくり」をテーマに、民生の福祉研究機関と、住人が定期的に集まり、居住地の見取り図に近隣との交流がある住人同士を線で繋いでいき、交流が薄い又はないと思われる住人を可視化していきます。
その後、その人達を対象に関わりを増やす機会を作ることで、社会的孤立を防ぐことを目的にしています。
取材を通して、気軽に助け合える社会を作ることが、孤独死を防ぐことに繋がること伝えています。
・5章
孤独死と見守りサービスについて取り挙げています。
この章では、社会的孤立状態の若者の孤独死を防ぐ為に、LINEを使った見守りサービスを5年間提供しているNPO運営者へ取材をしています。
サービス本来の目的は、親族の孤独死をきっかけに、両親が同状況に至るのを防ぐためだったといいます。運営者は、想定外の運営状況に驚愕しつつも、日々若者の生きづらさに対する悲痛な叫びと向き合い続けてます。
取材を通して、年齢層を問わない社会的孤立について、国単位で捉えて、対策を検討する必要性があること伝えています。
他には、ある社団法人の代表者に取材しています。
この法人は、顧客の死に対する希望を叶える為、生前に様々な機関との契約を中枢し、最期まで本人サポートするライフプラン設計をしています。
取材を通して、死生観を持ち、自分の人生と向き合える人が増やせる社会を作ることで、孤独死を防ぐことに繋がることを伝えています。
・6章
社会的孤立状態にあったある男性が、「猫町倶楽部」サークルへの所属を機に人生が大きく変化した話を取り挙げています。
「猫町俱楽部」サークルは、2006年に名古屋で誕生して以来、全国各地に拠点を広げています。読書会を開催しており、年齢層や、性別を問わず誰でも気軽に参加できるコミュニティとして知られています。本章では、読書会の開催状況についても紹介しています。
取材を通して、社会的孤立の状況から抜け出すには、自分らしくいられる小さなコミュニティを探して参加していくことが大切であると伝えています。
また、コミュニティの在り方を考えることも大切であり、どんな人が来ても受け入れられる場所を作ることが必要であるといいます。
本書の魅力について
筆者の取材を通して、孤独死の現状や、残された遺族たちの苦悩や、後悔などをそのまま文章化している為、「孤独死とは何か」を正面から理解できます。
また、人間関係を持たず孤立状態でいることが、如何に孤独死に至るリスクを跳ね上げることに繋がるかを認識できます。
まとめ
今回は、「孤独死大国 菅野久美子」を取り挙げました。本書を読んで、一人一人が孤独死を防ぐきっかけにしていただけると嬉しいです。
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他の書籍も紹介していますので、是非読んでいってください!
ここまで読んでくださりありがとうございました。