高知県の黒潮町に診療所を構える疋田善平医師(102歳)は、約40年にも渡って住人の訪問診療を行い、健康に力を入れてきました。
診療に携わる中、疋田氏は、ある事実を発見します。佐賀町では、60歳を過ぎた高齢者は、海辺で隠居生活を送る経済的に豊かな人と、森で山菜を採り、畑を耕して生計を維持する経済的に切迫した人の大きく2パターンに分かれますが、山間部で生活している人たちの方が、健康的な人が多いということが分かったのです。
このような結果を受けて、疋田氏は、「60歳を過ぎても人の為に働き続けること」を重視しており、身体の老化速度の抑制や、精神的な豊かさを感じ、人生を幸せに生きられることを強く伝え続けています。そして、このような人生を送ることで、高齢者自身の死生観と向き合う機会を与え、今を真剣に生きるようになると言及しています。
その結果、「満足死」の概念を持てるようになり、死を恐れず生きることができると伝えています。満足死とは、高齢者自身が終末期を迎える前に、どういう死を迎えたいかについて、医師や、家族を巻き込んで当事者の要望を優先する考え方です。
筆者は、疋田氏への取材を通して、満足死を迎える高齢者が増えることが望ましい反面、現実で家族が考える当事者の死生観が、本人が望むものとの間に乖離があることに注目しており、当事者の介護に積極的・協力的な家族や親族の存在が、満足死の重要な指標になると伝えています。
他には、予防医療にも注目しており、住民の健康向上や医療費の削減に繋がることや、健康な人が増えれば、患者を介護できる人も増える為、家族の枠を超えた介護の在り方についても言及しています。
本書を読んでみて
満足死を迎えるには、高齢者の死生観を優先しますが、医者や、家族、場合によっては地域の人々の協力が必要不可欠であり、1つでも欠けてしまうとなかなか実現するのは難しいことを改めて認識しました。
周りに人達の協力も勿論ですが、大切なのは、高齢者自身ができる限り健康的に暮らすことであると思いました。個人的な考えですが、「ピンピンコロリ」は正に理想的な死生観であり、満足死にも該当すると思います。
概要について
全7章から構成されています。
・1章:寝たきりゼロの町
寝たきり高齢者ゼロの町を目指して、疋田氏の24時間体制の訪問診療の現場について紹介しています。
・2章:広域総合病院構想
以下の2点を紹介しています。
①疋田氏が医師を目指すまでの人生について
②疋田氏が提唱する「広域総合病院構想」(家で最期を迎えたい患者の要望を叶えることを目的に、訪問診療を行うだけでなく、手に負えな場合は、専門医に紹介状を送り患者とつなげる)の概要について
・3章:満足死宣言
以下の3点を紹介しています。
①満足死の概要について
②幸せと健康度について
③満足死に基づくリビング・ウィルについて
・4章:寝たきりにならない生活
以下の2点を紹介しています。
①「元気でいることは、死ぬまで働くこと」について
②満足死を叶えられる時代について
・5章:それぞれの満足死
以下の2点を紹介しています。
①満足死を叶えた家族について
②満足死を実現する為の課題について
・6章:ケア完備の町づくり
以下の2点を紹介しています。
①ケア完備の町づくりと「ケア完備集落構想」について
②生活習慣病の予防と満足死のつながりについて
・7章:半歩先の満足死
以下の2点を紹介しています。
①予防医療と住民の健康向上について
②NBM(物語に基づいた医療)に基づいた治療(人生の目的を見出し、健康の向上に結び付ける治療)について
本書の魅力について
高齢者の死生観や人生観を真剣に考える機会を与えてくれます。今後、超高齢化社会を迎えるにあたって、年層を問わず、高齢者になった自分の生活をイメージすることは大切であり、多くの気づきや学びを与えてくれます。
他には、102歳の疋田氏のパワフルな生活には、圧倒されます。自分の高齢者になった時には、疋田氏のように多くの人に貢献できる人でありたいと強く感じました。
まとめ
今回は、[102歳の医師が教えてくれた満足な生と死 奥野修司]を紹介しました。以前、似た内容の書籍である[うらやましい孤独死 森田博之]を取りあげております。是非見てみてください。
皆さんは高齢者になった時、どういう人生を送りたいですか?
若い今のうちから向き合って考える機会にしていただけると嬉しいです。
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他の書籍も紹介しておりますので、是非読んでみてください!
ここまで読んでくださりありがとうございました。