発達障害を抱える人の中で、発達検査の結果がほぼ同じであるのに、その後の人生での過ごし方が、当事者によりそれぞれ異なるケースがよく見られます。
何がこの違いを生むのでしょうか。筆者は、当事者たちの「生き方」の違いが、大きく影響していることに注目しています。生き方とは、つまり、生きづらさを抱えながらも、自分の活かせる部分を知り、乗り越えようと行動することです。
グレーゾーン該当者は、障害の程度は軽度であるものの、過去の愛着やトラウマが絡んでいる為に、生きづらさは深刻になります。
本書では、筆者の臨床経験を通して、生きづらさを抱えながらも、どのように行動し、気持ちのバランスを取り、何を目指して進んでいけばいいのかという具体的な方法を紹介しています。
本書を読んでみて
生きづらさを克服する方法について、具体的なことだけでなく、問題に対する考え方や捉え方についても触れているので、発達障害を抱えていない人でも参考になる内容になっています。
また、医学や、心理の専門知識が無くても読めるので、分かりやすいです。
概要について
全10章から構成されています。
・1章
睡眠と生活リズムを整えることについて触れています。
睡眠リズム、生活リズムの崩壊要因に関して、以下に2つの具体例を紹介しています。
①思春期・青年期の自律神経の働きや、体内時計の調整機能の低下
②季節的要因による光・気温・気圧の身体的影響
上記の要因の対策として、
①では、ストレッチや、散歩、薬物投与を紹介しています。
②では、暖房や冷房による温度調節方法や、アイマスク、遮光カーテンの使用について触れています。
・2章
楽しみと心地良いルーティンをもつことに触れています。
大まかに、心身の健康の為に取り入れるべき習慣について、以下に4つ紹介しています。
①自分の体が感じている感覚に目を向けて、ゆっくり味わいながら体とやり取りする(運動や、ヨガ、マインドフルネスなど)
②身近なことに取り組んだり、些細な日常に小さな喜びを感じる(関心のあることや、やりたいことへ取り組む)
③自分の生活をコントロールでできるようにする(片付けや、収支・時間の管理など)
④ワーキングメモリの更新をする
(ワーキングメモリの特徴:メモ的な記憶で、同じことをそのまま記憶し続ける短期・長期記憶とは異なり、絶えず中身を入れ替える。
即座の処理に必要な情報だけを頭に留め、役割が終われば、次の処理に必要な情報に場所を譲らせる。)
上記の習慣について、発達障害の特性を交えながら詳細に言及しています。
・3章
感じのよい人になることについて触れています。
人との対話で、相手から好感をもたれる人になることが大切であると言及しています。
特に、以下の4つの点を重視しています。
①愛想が良く、相手に対して明確な応答反応がある
②相手の話をきちんと聴ける
③清潔感がある
④相手ノーサインをきちんと受け止め、無理強いしない
上記について、発達特性や、筆者の臨床経験を取り挙げながら、詳細に解説しています。
・4章
心を開き、安全基地を手に入れることについて触れています。
心を開いた状態になる条件について、以下に3つを紹介しています。
①相手に対する新鮮な関心をもてる
②相手をありのままに受け入れ、認められる
③先入観や思い込みなしに相手と向き合える
心を開くことで、相手との間に安心や信頼が生まれることで、相手を救い元気になるだけでなく、自分自身も救われ元気をもらえると伝えています。
・5章
自分を守れる人になることについて触れています。
相手の要求を上手に断る方法について言及しています。
以下に3つの点を紹介しています。
①状況に応じて適切なノーサイン(顔色や、声、断り文句)を表現する
②礼儀正しく接して、一定の距離を取る
③事情をきちんと話す
上記の方法について、発達特性に触れながら詳細に解説しています。
他に、自分を守る方法について、誰かに助けを求めれることや、何かを止めたり逃げ出すことについても言及しています。
・6章
こだわりと白黒思考から自由になることについて触れています。
こだわりや白黒思考から自分を解き放つための方法について、以下につ紹介しています。
①相手の身になって考える習慣を身に着ける
②自己視点だけで物事を決めず、客観的に捉える
③決まった行動パターンを止めて、新しいこと取り組む
上記の方法について、発達特性を取り挙げながら詳細に解説しています。
他には、グレーゾーン者が、想定外の自体や、意に反する事態に遭遇した時にに、パニックにならない方法についても触れており、以下に7点を紹介しています。
ⅰ)引き金に気づき、そうした事態に遭遇しないように配慮する
ⅱ)もっと安全な代替行動や気持ちを落ち着かせる対処法を学び、練習する
ⅲ)自分の課題であることに気づく
ⅳ)起きている事態にやり取りする(言語化する)
ⅴ)自分のことを一番わかってくれる人の顔や反応を思い浮かべたり、自分に言葉をかけたりする
ⅵ)自分の状況を客観的に眺める
ⅶ)この事態の原因になった人の身になって考える(自分のことを本当に傷つけていたのか)
・7章
不安やネガティブな感情に対処することについて触れています。
不安を抱える人に共通している特徴について、以下に3つ紹介しています。
①自分に合わない環境や、ふさわしくない生き方に我慢している
②人から見て自分がどう評価されるのかを重視している
③パニックなどを起こして、身体的や、精神的な負荷がかかる
上記の特徴を対処するために、以下に4つのを方法を紹介しています。
ⅰ)否定的な思い込みは、心ない他者から与えられたものであり、本来の自分の価値観や可能性とは異なるものであると認識する
ⅱ)唾の嚥下(呑み込み)により、副交感神経を働かせて、緊張や不安を和らげる
ⅲ)運動や、作業的なことに無心に取り組み開放感を味わう
ⅳ)自分の気持ちを紙に書きだして、事実と推測(思い込み)を切り分けて、気持ちの整理する
他には、自己肯定感を高める方法についても触れており、以下に2つ紹介しています。
⑴自分の意思を持って、小さなことにチャレンジし成功や達成を経験する
⑵勉学や、仕事もしっかり準備をして挑み、できなかったことは、おさらいを怠らず、同じことを繰り返さない
・8章
人生をコントロールすることについて触れています。
自分の人生を良い方向へ進む為に、その人の抱える失敗パターンをを知る必要があることを言及しています。
発達特性(ASD,ADHD)毎にパターンを紹介しています。
ASD(自閉スペクトラム症):物事を始める段階では、慎重になりすぎて時間がかかる。
慣れてくれば、段々処理速度が上がる。
ADHD(注意欠如・多動症障害):物事に取り組む初期段階では、慎重に丁寧に対処するが、同じことの経験が多くなるにつれて、対応がずさんになり、注意を払わなくなる
自分を客観視する機会を持つことが、失敗パターンをより早く認識できると伝えています。
・9章
自分自身と繋がることについて触れています。
グレーゾーン該当者が、自分らしく生きることに重視しており、4つの心構えを紹介しています。
①自分なりに好きなことや、得意なことを自覚する
②本来の自分の気持ちや、欲求から目を背けず明確にする
③自分がどう生きていきたいかを自覚し、主体的に決断して行動する
④他者から自分の価値が認められる体験を通して、自分の信頼や自信を取り戻す
上記の項目について、筆者の臨床経験や、世界的に有名学者や研究者たちの人生を取り挙げながら詳細に紹介しています。
・10章
筆者のこれまでの人生を振り返りながら、生きづらさを抱える人達への思いを伝えています。
本書の魅力について
筆者の臨床体験が多く取り挙げられており、グレーゾーン該当者の生きづらさをダイレクトに感じられます。
他には、世界的有名な学者や、研究者、実業家の人生についても触れており、発達障害を持ちながら成功した彼らの生き方は、不安な人生を送る人へ、生きる勇気を与えてくれます。
まとめ
今回は、「発達障害「グレーゾーン」生き方レッスン 岡田尊司」を紹介しました。
本書は、世の中に生きづらさを抱える全ての人に、勇気を与えてくれる素晴らしい作品です。是非読んでみてください。
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他の書籍も紹介していますので、是非見てください!
ここまで読んでくださりありがとうございました。